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ラティーノ!!
米国最大のマイノリティ

3-オマケ)ラテン・パワー炸裂!  ショービズ事情



 マーティン・シーン、チャーリー・シーンの俳優親子はスペイン系米国人だが、“エステベス”という本名の代わりに“シーン”という英語名を名乗っている。特に無名時代は名前から出自やルックスを推測され、オーディションにこぎつける前にハネられることもあるからだろう。「ドイツ系という設定の役に“エステベス”という名のラティーノは使えないな」という具合だ。


 『アラビアのロレンス』で知られる名優アンソニー・クインは、父親がアイルランド系、母親がメキシコ人だが、ハリウッドでもらえる役柄の狭さに辟易し、一度はイタリアに活動の場を移していた。


 しかし、最近ではラティーノの役柄も徐々に広まり、ラティーノ・キャラクターで人気街道を邁進するスターも出てきた。ジョン・レグイザモは南米コロンビア出身で、話す英語にも強烈なアクセントがある。そのために正統派の演劇学校に入学できなかったり、“レグイザモ”という姓を変えるように勧められたこともあったと言う。だが、あくまで自身のアイデンティティーを押し通したレグイザモは、ラティーノ役だけでどんどんと人気を勝ち得ていった。


 映画『チャーリーズ・エンジェル』シリーズでお馴染みの人気女優キャメロン・ディアスがラティーノだと言えば驚くだろうか? 正確には、父親がキューバ系アメリカ人、母親がドイツ系+その他の血を持つ女性なので、“半分ラティーノ”ということになるが、シーン親子と違い、“ディアス”というラティーノ姓を屈託なく使っている。しかし時代が過わったっせいか、もしくはブロンド&ブルーアイズのためか、キャメロンは苦労なく白人の役を得ている。


 ラティーノとしてのアイデンティティーを要所要所でうまく使っているのがJ-Loだ。音楽や自身のファション・ブランドのデザインではプエルトリコ系であることを全面に押し出しているが、映画では演じる人種・民族を問わない。中庸的な顔立ちの成せるワザだろう。


 音楽畑では、クリスティーナ・アギレラ(父親はエクアドル系、母親はアイルランド系)、マライア・キャリー(父親はアフリカンーアメリカンとベネズエラ人の混血、母親はアイルランド系)が“意外な”ラティーノだ。もっともそれぞれラティーノの血は半分もしくは4分の1で、一見ラティーノとは思えない顔立ち。


 このふたりがラテン音楽ではなくポップスを歌っているのは、自己の出自を隠しているわけではなく、ラテン文化の薄い環境で育ったためだろう。クリスティーナ・アギレラは2000年にスペイン語アルバムをリリースしているが、スペイン語は話せない。


 ラティーノであることを隠した古い世代と、自己の出自を堂々と押し出す世代。他のエスニックと混血し、ラティーノ意識の薄い者と、人口の増加に合わせてラティーノであることを意図的に発するマーケティング。ショービズ界のラティーノも、なかなか大変である。




U.S. FrontLine No.190(2003/07/20号)掲載記事
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