ハーレム


ブラック・ファッション拝見!

チョコレート色の肌、しなやかな手足、まるくて広いオデコにチャーミングな瞳。黒人には、彼らならではのヴィヴィッドでユニークなファッションがよく似合う。


【ストリート・ファッション】

 ヒップホップ・カルチャーが生み出した思わぬ副産物のひとつが、一般に“ストリート・ファッション”と呼ばれる、あの独特のスタイル。今や人種を問わず、アメリカ中の若者のスタンダードとなった感すらあるファッションだけれど、そんな格好でキメてみたい、でもブラック・コミュニティに行くのはちょっとコワい…という男の子たちは、なんとデパートでストリート・ファッション・ブランドをショッピングしているらしい。でも、それじゃあ何かが違う。ストリート生まれのストリート・ファッションを着てみたいのなら、まずはストリートに来てブラック・キッズの着こなしを観察してみよう。


 ハーレム125丁目を歩いてみれば、通りで見かける若い男性の90%はストリート・ファッションだ。XXLやXXXLのビッグ・サイズなシャツ。これは必ずPhatfarm、Sean John、FUBUなどのストリート・ファッション・ブランドであること。ブラック・キッズはブランド指向が非常に強いのだ。


 ジーンズももちろん太いバギー・タイプで、腰骨あたりまで下げて履く。本来なら、お世辞にも上品とは言えない着こなしだけれど、ヒップの位置が高くて脚の長いブラック・キッズには不思議とよく似合う。そして足元はナイキの最新モデルやティンバーランドのブーツでキメる。一説にはこのダボダボ・ファッションの由来は、なんと囚人服だとか。刑務所内では囚人たちはベルトを取り上げられていたので、いつもズボンがずり下っていたのだという。


 最後に重要な小物としては“ツーウェイ”と呼ばれる、Eメールも送信できるポケベル。ケータイではなく、敢えてポケベルなところがミソ。最近はラッパーたちのビデオ・クリップにも頻繁に登場している。


 ちなみにPhatfarmの社長ラッセル・シモンズは、ブラック・ビジネスの大立者として大いに尊敬されている。彼は黒人の若者にとって憧れのロール・モデルでもあるのだ。


【ガールズ・ファッション】

 若い女の子のファッションは、すべてが大きめサイズの男性とは違い、セクシー&タイトにまとめる傾向がある。今年の夏は、おへその出る短いタンクトップと、ローライドと呼ばれるウエストの低いジーンズを組み合せ、背中に入れたタトゥをチラリと見せるのが流行った。褐色の肌のなせる技か、肌の露出やタトゥも健康的に見えるから不思議。


 マニキュアも必須アイテム。長い付け爪に、信じられないほどの細かいペイントを施してくれるネイル・サロンがハーレムには無数にある。ヘアケア用品店では黒人専用ブランドの化粧品も買えるけれど、これにはダーク&シャイニーな色合いを使いこなす独特のテクニックが必要。でも、あまりにも派手で品のない女の子は“Hoochie Mama(フーチー・ママ)”と呼ばれて敬遠されることもある。最近はブラック・ファッションに憧れる日本人女性も多いけれど、“やり過ぎ”にはくれぐれもご注意を。


【ヘア・スタイル】


 アフリカン−アメリカンの女性のオシャレでもっとも特徴的なのは、なんといってもヘア・スタイル。


 1960年代には黒人運動の隆盛と共に“ブラック・イズ・ビューティフル”というスローガンが生まれ、黒人の縮れた髪をそのまま見せるアフロ・ヘアが流行った。けれど時は移って2001年、ヘア技術の驚くべき進歩が、黒人女性にあらゆるヘア・スタイルを可能にした。そのひとつは薬品を使った直毛技術。もうひとつはエクステンションと呼ばれる付け毛の編み込み技術。ハーレムの専門店をのぞくと、そこにはあらゆる長さや色のエクステンションがぎっしりと並んでいる。それを地毛に編み込むことによってブレイズ、ストレート、カーリー、コークスクリュー(コイル状のカール)など、どんなスタイルでも思いのままで、そのテクニックはまさにアート!けれどオシャレには忍耐も必要。100本以上もの細かい三つ編を編むブレイズは、編み上げるのに8時間もかかるのだ。


 他にもコーンロウと呼ばれる編み込みやドレッドロック、歌手メイシー・グレイの影響か、おしゃれなアフロなど、そのバラエティは無限。


【アフリカン・ファッション】


 アフリカ回帰思想の表れでもあるアフリカン・ファッションも見逃せない。今風なファッションにもアフリカン・テイストの小物をさり気なく取り入れたり、髪を全て布で巻き上げてヘッドラップにしてみたり。これは数年前のエリカ・バドゥの登場で一気に広まったものだけれど、実はそれ以前から、アフリカを自分のルーツだと考えるアフリカン−アメリカンたちの間では根強く好まれてきたスタイル。


 一方、最近はハーレムにも西アフリカからの移民が増えている。彼女たちの本場の着こなし 〜カラフルなアフリカン・プリントの生地で作ったドレスと共布のヘッドラップ〜 は、今ではハーレムの新しい風物詩とすらなっている。


U.S. Front Line 2001/09/05号掲載記事
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