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2006/4/28アップ
(初掲 2004年7月)



見えない境界線〜人種差別 Now
マイノリティ・コミュニティーに暮らす



       
■ヴィンセント・リトルジョン(15歳)
        エスニック:プエルトリコ系+アフリカンアメリカン
        職業:高校生
        居住地:ニューヨーク


マイノリティー・コミュニティーで育った子どもたちは、10代になると他のコミュニティーへ出掛け始め、他人種とも交わり始める。しかし、他人種の「親友」を作るティーンエイジャーは、一体どれほどいるのだろうか


 僕は母がラティーノ、父がアフリカンアメリカンで、ハーレムで生まれ育ったんだ。高校はハーレムの外にあって白人の生徒もたくさんいるんだけど、こんなにたくさんの白人と一緒になるのは初めての経験だったから、入学したての頃は緊張したよ。でも、もう慣れたし、白人の友だちも出来たよ。


 週末? 友だち10人くらいでワッーとタイムズスクエアに出掛けることが多いよ。映画館や、ヤンキーズストアやWWF(プロレス)ストアとか、なんでもあるからね。一緒に出掛ける友だちのエスニック? 黒人とラティーノ。白人はいない。どうしてかって? 誘っても来ないからさ。どうして来ないかって? 分からないよ。


 人種差別されたことって、特にない。でも「買い物に行ったら、万引きしないかと警備員に見張られた」とか、友だちからそんな話を聞くと、いつか僕にも起こるかも、とは思う。


 大学は、南部の黒人大学(*)に行くかもしれないし、ニューヨークの(人種混合の)大学になるかもしれない。良い学校であれば、どちらでも気にしないよ。将来、白人ばかりの職場でも気にせず就職するかって? まだ全然分からないよ。


*黒人大学=最高裁が1954年に人種分離教育を違憲と定めるまで黒人は大学に入学することが非常に困難だったことから、黒人学生のために作られた大学。南東部諸州に約200校あり、現在ではすべての人種の学生を受け入れているが、やはり黒人学生が圧倒的に多い



        
■アントワネット・キース(15歳)
         エスニック:アフリカンアメリカン
         職業:高校生
         居住地:ニューヨーク


 私もハーレム生まれのハーレム育ち。今、通っている高校もハーレムにあるの。ハーレムについてどう思うかって? 安全だと思うわ。「ハーレムは(マンハッタンの他地域に比べて)犯罪発生率が高いし、ギャングもいる」ことについて? う−ん、確かにそうだけど、近所の人たちのことは昔から知っているし、ギャングの友だちなんていないし、怖いと思うことはないわ。


 私も差別された体験はないわね。あ、でも、以前、ダウンタウンの合唱隊に参加していたの。メンバーのほとんどは白人で、最初は「白人の子たちの方が私よりうまく歌えるんじゃないか」と思って気後れしたわ。でも、歌い出してみると、そうじゃないことが分かった。私も思いっきり声を出して歌えばいいんだ、って分かったの。


 どうして「白人のほうが歌が上手」だと思い込んでいたかって? ……自分でも分からないけど、たぶんメディアのせいじゃないかなぁ。ほら、テレビでも、白人はいつでも良い役を演っているわよね?



■見えない境界線〜人種差別 Nowインタビュー:

1)イレイニー
  ドミニカ系アメリカ人(ラティーノ)

2)シドニー
  アフリカ人/ハイチ人/アメリカ人

3)ヴィンセント + アントワネット
  プエルトリコ系+アフリカンアメリカン + アフリカンアメリカン

4)エリカ + マーク
  日本人 + アフリカンアメリカン

5)チャーリー
  東アジア系移民

6)ニコラス
  スロバキア人移民





※ U.S.FrontLine その他の記事

U.S. FrontLine No.219(2004/07/第1週号)掲載記事
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文・写真:堂本かおる