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(初掲 2004年7月) |
■イレイニー・デュバージ(24歳) エスニック:ドミニカ系アメリカ人(ラティーノ) 職業:コンピュータインストラクター 居住地:ニューヨーク マジョリティー社会に属せば、自分自身のエスニック・コミュニティーから切り離されてしまうのだろうか。彼女の場合、ふたつのコミュニティーは地下鉄でわずか30分の距離。 私が人種差別についてのインタビューを受けるって言ったら、母が「あなた、差別なんか受けたことないでしょう?」って言うの(笑)。確かに、はっきりと人種差別だと言えるような体験はないわね。 両親はドミニカ共和国からの移民で、私はニューヨークのブロンクスにあるラティーノ・コミュニティーで生まれ育ったの。近所に住んでいるのはラティーノと、あと黒人ね。子どもの頃に住んでいたアパートの東方向と西方向、それぞれ同じくらいの距離の場所に食料品屋があったの。一軒はラティーノ経営、もう一軒は黒人がオーナーだったわ。母は私をお使いに出す時、「黒人の店には行っちゃだめよ」と言ったものよ。当時、母は英語があまり話せなかったから、黒人同士が大きな声で話をしていたら、ケンカしているんじゃないかと脅えていたのね。私自身は英語も話すし、どちらの店にも区別なく行ったけれど。 ラティーノと黒人の違い? うーん……、大きな違いはないと思うわ。ドミニカ系にだって大声で話す人はたくさんいるし(笑)。だから今、私は黒人コミュニティーであるハーレムで働いているんだけど、ここに居て特に違和感は感じないの。かといって“自分の場所”というほどの親近感も湧かないけれど。 ■ラティーノ社会のヒエラルキー ラティーノにはいろいろな肌の色の人がいるでしょ。けれど私たちはアメリカ黒人ほどには、肌の色の違いにこだわらないの。(*) *アメリカ黒人の間では、一般的に肌の色が薄いほど良しとされる傾向がある。濃い肌色の場合、特に女性はコンプレックスの原因となることが多い それよりも、同じラティーノであっても出身国の違いのほうが問題になるの。従妹がドミニカ系の男性と婚約した時、叔母は言ったのよ。「彼は“モレノ”(スペイン語で肌の色が濃い人を指す)だけど、それでも良い人だからよかったわ」。つまり、できることなら色の薄い人のほうが良いけれど、プエルトリコ系やベネズエラ系など、他のラテン国の出身ではないから喜んでいたのね。 そういえば、以前、私が付き合っていたボーイフレンドはプエルトリコ系だったの。彼はことあるごとに、いちいち「君はドミニカ系だからね」って言うのよ。彼らはラティーノ・グループの中ではもっとも早くにニューヨークに来た歴史を持っているから、後から来た私たちドミニカ系をちょっと見下しているのよね。 ■マジョリティー社会に対する憧れ/恐れ これから先、白人社会で働く可能性はあるかって? うーん……、多分ないわね。結婚相手? それも多分、ラティーノになると思うわ。でも、本当は私、新しい世界に行ってみたいの! マイノリティー・コミュニティー以外にあるオフィスに勤めて、ラティーノじゃない男性と結婚して、新しい体験をしてみたいわ。けれど孤独になるのは嫌なの。 “孤独”の意味? たとえば、職場での出来事(白人の同僚とのやり取りなど)を家に帰って母に話しても、きっと全然通じないわ。母は今では英語も話せるようになっているけれど、ラティーノ・コミュニティーを出たことがないから、ラティーノ以外の人たちのことは知らないのよ。そんなふうに家族とコミュニケーションが取れなくなることが怖いの。家族はとても大切だから。 ■見えない境界線〜人種差別 Nowインタビュー: 1)イレイニー ドミニカ系アメリカ人(ラティーノ) 2)シドニー アフリカ人/ハイチ人/アメリカ人 3)ヴィンセント + アントワネット プエルトリコ系+アフリカンアメリカン + アフリカンアメリカン 4)エリカ + マーク 日本人 + アフリカンアメリカン 5)チャーリー 東アジア系移民 6)ニコラス スロバキア人移民 ※ U.S.FrontLine その他の記事 |
U.S. FrontLine No.219(2004/07/第1週号)掲載記事
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文・写真:堂本かおる