NYBCT

2007/11/13



「アメリカン・ギャングスタ」世代
映画館で見掛けたよっぱらいの爺さん


 こんにちは。最近すっかりブログに移行してしまい、メルマガをさぼっていましたが、「メルマガを待っているのに」という声を聞きました。「自ら見に行くブログ」と「届くのを待つメルマガ」では、読者さんの住み分けもあるのだろうと気付いた次第です。なので、がんばってメルマガも再開してみようかな……と。本日はいたって小ネタですが。


 タイムズスクエアのシネコンに「アメリカン・ギャングスター」を観に行った。デンゼル・ワシントンが、1970年代に一世を風靡した実在のドラッグディーラーを演じた話題作。去年、ハーレムで盛んにロケをしていたので楽しみにしていた作品だ。


 実は11月2日の公開早々、海賊盤DVDを手に入れて観たのだった。……などと告白すると、「そういう行為がクリエイターの利益を蝕み、引いては映画界全体の……」なんていう抗議のメールが来るのが目に見えているのだけれど、人にはそれぞれ事情があるということで。


 と言いつつ、ハーレムのダンキンドーナツで中国人のおねえさんから買った海賊盤は、いつも海賊盤を買っているらしい甥っ子も驚嘆した高画質なのだった。劇場での盗撮ではなく、マスターから落としたものだろう。これはやはり問題だなぁ。(業界内部の。)


 おかしかったのは、DVD行商の中国人のかわいいおねえさん。ダンキンに入って来て、ドーナツを食べている黒人客には「DVD! DVD!」と声を掛けるのに、私には何も言わない。ところが、ちょうど「アメリカン・ギャングスター」を買ってくるよう頼まれていた私が5ドル也でお買い上げすると、たどたどしい英語で「もう1枚買う?」 移民はたくましいのだ。


 で、その日、素晴らしいクオリティーの海賊盤を観はしたものの、必要があって今日、映画館で観直してきた。


 タイムズスクエアの映画館、昼間なのに結構込んでいるのはブローウェイ・ミュージカルがスト中につき、仕方なく映画に切り替えた観光客のためだろうか。私の右隣にはカップルが座った。幸いにも左には誰も座らなかったのでコートとバッグを置いた。


 映画が始まって20〜30分もしたころ、杖をついた黒人の爺さんがふらふらとやって来て、いきなり私のコートの上に座った。「あ!ちょっと! コートとバッグを取るから!」と言っても返事もしないし、立ち上がりもしない。息が酒臭い。座るなり、ひざをカタカタ貧乏ゆすりを始めて、それが止まらない。アル中なのだ。


 でも大人しく画面を見つめているし、害は無さそうなので、コートを取り戻すと私もそのまま映画に戻った。


 映画のクライマックスが終わり、あと20分くらいで終わるという頃(海賊盤を鑑賞済みなのでストーリーは分かっているのだ。)、アル中の爺さんはいきなり立ち上がり、ふらふらと出て行った。


 暖を取ったり、眠るために映画館にやって来るホームレスもいる。大方の場合、彼らは映画など観ずに眠りこける。なのに、今日の爺さんは熱心にスクリーンに見入っていた。そもそもタイムズスクエアの映画館は11.75ドルもするので、ホームレスはあまり来ないのに。


 ちょっと待てよ、あの爺さん、70代くらい? フランク・ルーカスより少し若いくらい?


 デンゼル・ワシントン演じる主役のドラッグ・ディーラー、フランク・ルーカスは実在の人物で、現在77歳。1970年代にベトナム直送のヘロインを、ハーレムを拠点にニューヨーク中で売りまくり、検事に「黒人にそんな大それたことが出来るはずはない!」と言わしめた人物。


 うーむ……あの爺さんは “フランク・ルーカスの時代”を体験している世代だ。そう気付くと、妄想がどんどんふくらんだ。「もしかして、ルーカス一味のメンバーだった?」「ルーカスの事業を支えた弟の1人?」……。


アメリカン・ギャングスター公式サイト(日本語)


What's New?に戻る
ブラックムービーに戻る

ホーム