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2002/11/21

ラッキー・ハリー・ベリー?
<黒人初>づくし

 先日、朝のニュース・ショーにハリー・ベリーが出演していました。公開間近の話題作『007/ダイ・アナザー・デイ』のプロモーションのためで、早朝にもかかわらず完璧なヘア、メイク、衣装で本当にきれいでした。と言うより、人生が充実していて輝いている人、という印象。なんといっても黒人初のボンド・ガールとなったわけですから。それにしても、浜美枝(67年)、ミッシェル・ヨー(97年)と歴代ふたりのアジア系ボンドガールがいるのに、黒人が皆無だったとは驚きです。


 その時のインタビューでハリー・ベリーが言っていました。
 「アカデミー賞を取ってからとにかく忙しい。人はアカデミー賞を(役者というキャリアに於いての)頂点だと思うでしょうけれど、私はこれでやっとスタート地点に着けたと感じている。今、ようやく良い脚本や監督を選ぶことができるようになったの」。


 <黒人女優>としてハリー・ベリーもこれまでは良い役を取ることに苦労を重ねてきたそうです。以前、『フリントストーン』(昔の邦題は確か『原始家族』、あの原始時代を舞台にしたギャグ・アニメの実写作品)への出演が決まった時には感激したと言っていました。なぜなら「白人女性用に作られた役を演じることが出来たから」。『フリントストーン』は特にどうということもないドタバタ・コメディでしたし、ハリー・ベリーもことさら印象には残りませんでしたが、彼女が<黒人女優>として、こういった感慨を抱いたということが、アメリカ映画界に於けるマイノリティ俳優の現状を物語っています。


 けれど、今、<黒人女優>でありながら、どんな役でも選べるようになってキャリアを上り詰めようとしているハリー・ベリーの顔立ちを今一度、思い浮かべてみてください。彼女は母親が白人、父親が黒人のミックスです。薄いカフェオレのような肌の色と、位置の低い頬骨でそれがわかります。(黒人は一般的に頬骨の位置が高く、それは<ハイ・チークボーン>と呼ばれ、時には白人からも賞賛されます)


 映画界をコントロールしている白人にとってハリー・ベリーは「黒人の中では比較的白人っぽい顔立ちだし、色も薄いし、まあ、OKか」な女優なわけです。彼女の他にも<きれいどころ>を演じる黒人女優を思い浮かべてみてください。ヴィヴィカ・A・フォックス、ヴァネッサ・ウィリアムスなど、共にすんなりした顔立ちで色も濃くないですし、特にヴァネッサ・ウィリアムスは目もグリーンです。(実は映画界の偉い人たちだけではなく、黒人の一般ファンも白人っぽい顔立ちの黒人女優を好む傾向があるのですが、これはまた別の機会に…)


 こんなことをあれこれ考えている時に、ニューヨーク・タイムズ11月18日付けの記事が目に付きました。アメリカの代表的なファッション雑誌『コスモポリタン』12月号の表紙にハリー・ベリーが登場しました。アカデミー賞&『007』効果です。ところが、この雑誌の表紙に黒人が使われたのは、なんと、1990年のナオミ・キャンベル以来12年振りだそうです。12年振り?! ということは、ナオミ・キャンベルに次いで黒人スーパーモデルとなったタイラ・バンクスですら、表紙になったことはないということです。なんと、まぁ…。


 <白人っぽくてラッキー>に思えたハリー・ベリーですが、それでもここまでの道のりは長かったのです。でも、これからはきっと安泰でしょう。本当に良かったです。あとの気掛かりは、<全然白人っぽくない>けれど、誰もが認める本格派女優のアンジェラ・バセットです。…いや、彼女は強くて美しい人ですから、私などが心配しなくとも、きっと大丈夫でしょう。


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