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2002/03/18

最近観たブラックムービー11本

 今回は、昨年からこれまでに観た映画のなかで、今まで書かなかった作品11本を一挙に並べてみます。日本でも既に公開になっているもの、オクラ入りになりそうなもの、ビデオでなら見つかるかもしれないもの、面白かったもの、つまらなかったもの…玉石混合です。


●ショータイム/Showtime ('02)
監督:トム・デイ(シャンハイ・ヌーン)


地道なベテラン刑事(ロバート・デニーロ)と、役者になりたいハデ好きパトロール警官(エディ・マーフィ)がテレビ番組のためにコンビを組むはめになり…というアクション・コメディ。


面白かったです。2人とも芸達者だから笑えます。特にデニーロ、こんなにトボけた味も出せる人だったのですね。でも、同じくエディ・マーフィが白人刑事(ニック・ノルティ)とのコンビで当てた『48時間』『48時間2』を凌ぐことは、残念ながら出来ませんでした。


テレビ局のプロデューサー役のレネ・ルッソはいい感じ。ラッパーのモス・デフも出てます。ちなみに彼は今、ニューヨークでブロードウェイの芝居『Topdog Underdog』に出ています。役者開眼。ウィル・スミスの名がエグゼクティブ・プロデューサーとしてクレジットされています。


公式サイト:
http://showtimemovie.com


●えくぼ見せて/Disappearing Acts ('00)
監督:ジーナ・プリンス・バイザウッド(ラヴ&バスケットボール)


テリー・マクミラン原作の大ヒット小説をテレビ映画化したもの。ニューヨーク/ブルックリンのブラウンストーンに越してきたゾラ(サナー・レーサン)は、音楽教師をしながらシンガーを目指している女性。一方、彼女が巡りあったフランクリン(ウェズリー・スナイプス)は、高校中退で工事現場で働いている男。自立した女性と、いつまでも甘えの抜けない男の関係は…。


“前妻との間にいまだにトラブルがあり、しかし定期収入もなく、将来も不安定”という、黒人男性に多いタイプを主人公に据え、女性としてはこういうタイプといかに付き合っていくべきか(付き合わざるを得ないか)が、シビアに、けれど最後はハッピーエンドで描かれています。


ゾラ役のサナー・レーサンは『ラヴ&バスケットボール』でオマー・エプスと共に主演していて、どちらでも芯のある女性の役をうまく演じています。ウェズリー・スナイプスはこの作品では頭を剃っているのですが、これはちょっとコワかったです。


原作は一章ごとに女の側/男の側からの描写になっていて、かなり面白いです。『えくぼ見せて』というタイトルで邦訳が出ています。


公式サイト:
http://www.hbo.com/disappearing/


●オール・アバウト・ベンジャミンズ/All About The Benjamins ('02)
監督:ケヴィン・ブレイ(初監督作品)


アイス・キューブ演じるバウンティ・ハンター(逃亡した犯罪者を捕まえて報酬をもらう職業)と、チンピラ(マイク・エプス)がコンビを組んで大金をせしめるアクション・コメディ。


マイク・エプスはかなり良いコメディアンで大いに笑わせてくれますが、惜しいかな、クリス・タッカーやクリス・ロックのようなチャーミングさがないので女の人にはウケないタイプかも。彼はアイス・キューブの『ネクスト・フライデー』でイトコ役を演じていて、シリーズ第三弾『フライデー・アフター・ネクスト』にも登場するようです。


ちなみに“ベンジャミン”とはお金を指すスラング。100ドル札にはベンジャミン・フランクリンが印刷されているところから。つまりタイトルを訳せば『すべては金について』。Money, money, money.........


公式サイト:
http://www.benjaminsmovie.com/


●ローザ・パークス物語/The Rosa Parks Story ('02)


黒人史月間である2月にCBSでオンエアされたテレビ映画。1955年にアラバマのモントゴメリーで起った大々的なバス・ボイコット運動の発端をとなった女性、ローザ・パークスを、実力派アンジェラ・バセットが演じました。


当時のバスは白人席と黒人席に分かれており、なおかつ白人席に白人が座り切れない場合は、黒人席すら白人に譲らなくてはならなかったのです。ある日、仕事帰りで疲れていた裁縫師ローザ(アンジェラ・バセット)は、白人に脅かされ続けることにも疲れ切っており、白人に席を譲ることを拒否したために逮捕されます。


敬虔なクリスチャンで物静か、けれど内に秘めたる意思を持つ女性を演じたアンジェラ・バセットは、さすがの実力。けれど10代の頃のローザを演じたのは、ちょっと無理がありましたね。夫役のピーター・フランシス・ジェームスも良かったです。マーティン・ルーサー・キングの実の息子であるデクスター・スコット・キングがキング牧師の役で出ており、お父さんそっくりの演説を聞かせてくれました。


興味深かったのは、当時の黒人団体のリーダーたち(当然、男性ばかり)の中には、女性であるローザにスポットライトが当たることを嫌った人もいた、という部分でした。


それにしても、この手の作品で黒人差別主義者を演じる白人の俳優さんは、ほんとうに大変だと思います。


公式サイト:
http://www.cbs.com/specials/rosa_parks/


●ジョンQ/John Q ('02)
監督:ニック・カサヴェテス(She's So Lovely, Unhook the Stars)


主人公ジョン(デンゼル・ワシントン)は工員で、妻(キンバリー・エリス)はスーパーのレジ係。経済的には苦労しながらも、まだ小学生の息子と一家三人、幸せに暮らしていました。ところが最愛の息子が今すぐに心臓移植が必要な重病だと判明、なのにジョンの加入している医療保険では移植手術はカバーされず、病院からは息子をただ死なせろと通告されます。思い余ったジョンがとった行動は…。


デンゼル・ワシントンが『トレーニング・デイ』でアカデミーにノミネートされたことも手伝ってか、興業収入は良いようです。妻役のキンバリー・エリスは『セット・イット・オフ』では大人しいキャラクターを演じていましたが、今回は芯の強さを全面に出していて、すごくいい感じです。美人じゃないけれど、そこにリアリティがあって。他にもジェームズ・ウッズ、ロバート・デュバル、レイ・リオッタといった大物も出ています。


映画の出来は完璧ではないけれど、テーマの深刻さに引き付けられます。もっとも“先進国の中では最悪”と言われるアメリカの医療保険制度を知らないと、ちょっと判りにくいかもしれません。要するにアメリカでは貧乏人は医者にすらかかれないのです。そういった医療制度の内情を暴露するシーンもありますので、医療関係の人には興味深いかも。


なお、映画ファンならアル・パチーノ主演の名作『狼たちの午後』を思い出すかもしれない設定です。


公式サイト:
http://www.iamjohnq.com/


●ボーンズ/Bones ('01)
監督:アーネスト・ディッカーソン(ジュース、デーモン・ナイト)


街の世話役だった人気者ジミー・ボーンズ(スヌープ・ドッグ)が裏切り者に殺されてから20年。その恨みを晴らすために幽霊となったボーンズが帰ってきた…というホラー映画。パム・グリアーがボーンズの恋人役なんですが、スヌープとパム・グリアー…どう思いますか、この取り合わせ。


スヌープが例のスムース・トークで、のらりくらりと街の顔役と幽霊を演じているので、それが観たい人なら楽しめます。スヌープのストレート・ロングヘア+ピンプ・スーツ、パム・グリアーのアフロと、ファッションはイケてます。


監督のアーネスト・ディッカーソンはスパイク・リー作品のカメラマンを長年務め、あの『ジュース』で監督デビューを果たした人ですが、実はホラー&サスペンスがお好きなようです。


公式サイト:http://www.bonesmovie.com/


●ジ・ウォッシュ/The Wash ('01)
監督:DJ Poo(フライデーの脚本担当)


ドクター・ドレとスヌープが勤務先の洗車場で起こす騒動を描いたコメディ。ドクター・ドレは生真面目なマネージャー役、スヌープは当然、シャワーキャップ姿でマリファナ吸い放題のダラダラ従業員という役をもらってます。上記『ボーンズ』と共に興業成績は全然奮わなかったそうですが、友達とビールでも飲みながらリラックスして観るには楽しい作品です。


なお、これは70年代の名作映画『Car Wash』へのオマージュですから、興味のある方は、そちらも観てみてください。


公式サイト:
http://www.thewashthemovie.com/


●ホワッツ・ザ・ワースト・シング・クッド・ハプン?/What's the Worst That Could Happen? ('01)
監督:サム・ウェイスマン(D2: The Mighty Ducks)


ダニー・デヴィート演じる破産寸前億万長者と、マーティン・ローレンス演じるコソ泥によるドタバタ・コメディ。久々に観た、超つまらないコメディでした。ジョン・レグイザモ、バーニー・マックみたいに面白い人たちも出てるのに。もったいない。


タイトルを訳せば『起りえる最悪の事態とは?』なんですが、それは、まさにこの映画のことでしょう。


公式サイト:
http://www.mgm.com/whatstheworst/


●ラッシュ・アワー2/Rush Hour 2 ('01)
監督:ブレット・ラトナー(ラッシュ・アワー)


ジャッキー・チェン&クリス・タッカーによるアクション・コメディ刑事ドラマの続編で、今回は香港とアメリカの両方が舞台。前回は“アクションはジャッキー、喋りはクリス”という分担があったけれど、今回はジャッキーが英語を、ものすごく頑張って勉強したのでしょう、いっぱい喋ってくれて、楽しさ倍増。


味のある実力派ドン・チードルが、黒人のくせに弁髪で中国語ペラペラという不思議な役で出てます。なお第3弾はニューヨークが舞台になるみたいで、今から楽しみです。


公式サイト:
http://www.rushhour2.com/


●ザ・ブラザーズ/The Brothers ('01)
監督:ゲイリー・ハードウィック(初監督作品)


モリス・チェスナットを中心とする4人の男友達と、そのガールフレンドたちの恋の駆け引き。全員ががオシャレな職についていてリッチなのが符に落ちないけれど、これは黒人作家による恋愛小説の王道パターンでもあります。


男たちは気楽な独身生活に終止符を打つことができなくて結婚をためらい、女たちはその言い訳をさんざん聞かされます。黒人の男はこんなに甘えたヤツばっかりなのか!と、女性はイライラしてしまうこと必至の作品です。


ところで、時間のある方は『ボーイズン・ザ・フッド』をもう一度観てみてください。いまやセクシー&オシャレなアクターとして人気のモリス・チェスナットが、主人公キューバ・グッディン・Jr.とアイス・キューブの友人役(車椅子の人)で出ていますが、今とは全然違って、妙に情けない風情を醸し出しています。


●トゥー・キャン・プレイ・ザット・ゲーム/Two Can Play That Game ('01)
監督:マーク・ブラウン(初監督作品)


予告編を見たとき、上記『ザ・ブラザーズ』の続編だと思いました。それくらいシチュエーションが似ています。


今回は一流企業に勤めるエグゼクティブ女性、シャンテ(ヴィヴィカ・А・フォックス)が主人公。美人でセクシーで頭も良いシャンテは、恋人(モリス・チェスナット)の浮気シーンを目撃しても慌てず騒がず“恋の駆け引き”の作戦を練り、それを私たち観客に向かって伝授してくれます。


考えたら、この作品はヴィヴィカの初主演作でした。彼女はなぜか顔がどんどん長くなってきています。ところでボビー・ブラウンが、プライドかなぐり捨ての、すごくヘンなチョイ役で出ています。


公式サイト:
http://www.spe.sony.com/movies/twocanplay/



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