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2001/10/17

悪の権化デンゼル

とっても良い子なリトル・ビル



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Training Day

 テロ事件の影響で公開が2週間以上も延期となっていた映画「Training Day」が、ようやく封切りとなった。これはデンゼル・ワシントンが初の本格的な悪役に挑んだ話題作で、封切られるやいなや10月公開作品の興業収入記録を作り、デンゼルのアカデミー・ノミネートすら、すでに語られ始めている。(ちなみに対抗馬は「モハメッド・アリ」を演じるウィル・スミスだと言われている)


 (ストーリー)LAの新米アンダーカバー(覆面捜査官)ジェイク(イーサン・ホーク)は、その初日24時間をベテラン刑事アロンゾ(デンゼル・ワシントン)に付いて、ストリートで過ごすこととなった。若く生真面目なジェイクは、アロンゾの強烈なカリスマ性や、強引な捜査方法に面食らう。だが時間を経るにつれて、アロンゾの正体が次第に判明し、やがてジェイクは予想もしなかった事態へと巻き込まれていく…。


 黒いレザー・ジャケットにシルバーのクロス、どくろのタトゥにギャングも顔負けの改造車、相手を見据える鋭い眼光に、脅しまがいのセリフ「無事に家に帰りたいか、それとも監獄にぶち込まれたいか?」…デンゼル・ワシントンは、アクの強い刑事役をとことん楽しんでいる風。それと好対照を成しているのが、イーサン・ホーク演じるフレッシュで善良な新任刑事。物語は、あくまでこのふたりを中心に進められる。それを取り巻くのが、チカーノ(メキシコ系アメリカ人)・ギャング、ベネズエラ人の妻と幼い息子。


 ところで、最近の映画ではギャング役の設定がアフリカン−アメリカンから徐々にラティーノに代わってきている。同じくLAが舞台の「ネクスト・フライデー」でもチカーノ・ギャング、ニューヨークが舞台の「シャフト」ではドミニカン・ギャングが登場した。今回もチカーノ・ギャングが出てくるけれど、彼らはほんとうにコワい。まったく笑わないのに「スマイリー」と呼ばれている男など特に。この傾向は、もしかしたらラティーノの新しいステレオタイプを作り上げるかもしれないと、ふと思う。これまでは「アフリカン−アメリカン=ギャング」と描かれてきたように。


 それにしても、こんなに暴力吹き荒れるすさんだブラック・ネイバーフッド(黒人地域)を見せられると、観客はやっぱり黒人ってコワい…と思うんだろうな…。(小さな子供連れで見に来ていた黒人家族は、途中で席を立った)


 なお、チョイ役ではあるけれど、街のチンピラ売人(スヌープ・ドッグ)、刑事(ドクター・ドレ)、ギャングの妻(メイシー・グレイ)などの出演はちょっとしたお楽しみ。スヌープは情けないチンピラ役が本当にうまい。ドクター・ドレは、やっぱり大根。メイシー・グレイはクレイジーな役がハマっている。サントラもこの3人は参加していないものの、Napalm/Cypress Hill feat. Kokane/Nellyなどハードコアな顔触れ。

公式サイト:http://trainingday.warnerbros.com/



Little Bill

 殺伐とした事件が続くなか、「トレーニング・デイ」のような殺伐とした暴力映画を観て、かなりおもしろかったものの、なんだか疲れてしまった翌日には、テレビの子供向けチャンネルでアニメ「Little Bill」を見る。


 「リトル・ビル」とは、あの国民的黒人俳優ビル・コスビー原案による絵本のテレビ・アニメ化作品。ブルックリン(らしき街)のミドルクラス・ブラック・ネイバーフッド(黒人中流地域)に暮らして幼稚園に通う男の子、リトル・ビルが主人公。


 ドレッドロックでセクシー・ボイスのマミー、ジャズ・ファンでナイスガイなダディ、バスケが得意でしっかり者のお姉ちゃん、シャーロックホームズを読むメガネのお兄ちゃん、やさしいおばあさん、ペットのハムスターと共に素敵なブラウンストーン(*)に暮らすリトル・ビルは、なぜかスキンヘッドだけれど素直で、かわいくて、とっても良い子。幼稚園で白人や日系の友達と遊んだり、おうちでマミーのお手伝いをしたり、時にはダディの会社を見学してみたり、ほのぼのと元気な日々を過ごしている。一般的にイメージされているブラック・ネイバーフッドのデンジャラスな気配は、ここには微塵もない。こんなにハッピーな黒人家族も、実はほんとうにいるのだ、ニューヨークにも。


 けれど、たとえば大好物のアイスクリームを買ってもらえるとなると、リトル・ビルはいきなり「チョッ・チョッ・チョッコレット・アイスクリッム〜」とラップもどきに歌い出すし、家族揃って遊園地に行けば、メリーゴーランドに乗る間際にダディがマミーにささやく。「手をにぎっててあげるからね、ベイビー。」(もっともクールなマミーは返事もせずにダディを見返すだけ) こういったエピソードは、やはりブラック・ファミリーならではか。おまけに軽快なジャズのBGMもなかなか雰囲気。


●残念ながら日本では見ることができない番組だけれど、以下のサイトでちょっとだけリトル・ビルに会えます。
http://www.nickjr.com/go/kids_bill/



●*ブラウンストーン=ブルックリンやハーレムでよく見られる特有な建築様式の家。上記のサイトにも出てくる。



●「Little Bill」放映時間 Nick Jr. 12:00pm-12:30pm (New York)

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