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2001/11/01

真夜中の『スケリー』
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 アメリカにはスケリー(*1)という子供のゲームがある。路上に数字を書き込んだ2〜3メートル四方の四角を描き、そこでビンのキャップをはじいてコマを進んでいく。石蹴りの別バージョンと思えば分かりやすい。


 うちのアパート正面の路上に、このスケリーの四角がペンキで描かれた。プレイヤーの名前も書き添えられている。Pop(パップ=おやっさん)、Moe(モー)、Pooh(プー)、CJ …黒人はポップなストリート・ネームを持っているし、スケリー・ボードも微妙にポップな感じの仕上がりだ。

スケリー


 そして夜も10時を過ぎたころ、若い男が10人も集まってきて、これで延々と遊ぶのだ。もちろん小銭を賭けて。ティーンエイジャーや小さな子供も混じっている。男たちの息子や従兄弟(いとこ)や甥っ子たちだ。ハーレムではみんな、やたらと家族・親戚が多い。


 ゲームが盛り上がってくると"Oh !! Shit !!" "Fuck !! Motherfucker !!" とやかましいこと、この上ない。彼らの言語中枢は4文字言葉を基本に成り立っているのだ。


 近所のアパートには会社員や消防士まで含め、まともに働いている人たちも当然のことながらたくさん暮らしている。でも住人たちは、男たちが路上に停めた車のカーステから大音響でヒップホップを流そうが、一晩中、表でたむろしていようが、絶対に文句を言わない。男たちも一般人にはちょっかいを出さないし、住民の方も男たちを恐れているわけではないのだけれど、かかわることは避けている。このふたつのグループは微妙なバランスというか、関係を保って同じコミュニティのなかで暮らしている。


 小さな子供を持つ親も、自身が街角でたむろしているタイプなら、子供も表でほったらかしで遊ばせている。だから子供たちは小さなうちからストリートの男たちの生態や態度・言葉使いを覚え、10歳にもならないうちに立派な“ストリート・スマート”に育つ。そのうちにドラッグ・ディーラーの使い走りをするようになり、やがては自分でドラッグを売り始めるケースもある。


 一方、こういった環境を危惧する親は、子供をけっして表で遊ばせない。朝、小学校へは親が送り届けるかスクールバスで通わせ、下校後はアフタースクール・プログラムと呼ばれる託児所に預ける。小学校から託児所のあいだも、託児所からの帰宅にも送迎を付ける。(もっともこれはハーレムに限ったことではなく、ニューヨークのような都会ではどこでも同じ)


 つまり子供はひとりになれる時間がないし、家庭・学校・託児所と、いつも大人の監視下に置かれることとなる。でも、そのことの善し悪しよりも、こういった環境のなかで子供をどれだけストリートから引き離しておくことができるかのほうが、ここでは、より重要。メディアで盛んにもてはやされている“ストリート”が、地元の人間にはいちばんやっかいな代物なのだ。


*1:skelly ニューヨーク/ブルックリン発祥のゲームらしい


ブラック・コミュニティに暮らす人の
エッセイ募集

…とは言え、なにか不思議な魅力に満ち満ちているハーレム。ここに暮らす日本人も最近ではかなり増えてきています。そこでハーレムに限らず、どこの国でも結構ですから、ブラック・コミュニティで暮らす人/働く人によるエッセイを募集します。


そのコミュニティで暮らすこと/働くことに関することであれば内容は問いません。近所の人たち、日々の生活、ノンブラックとして思うこと、コミュニティの問題 … 楽しいエッセイ、ディープな考察、または単に「となりのオバさんは声もデカいが、テレビの音も異常にデカい」といった1行や詩でも歓迎です。


書いてくださる方は以下の項目を書き添えて、Keideee@aol.com
までお送りください。★締め切りは2001年11月13日(火)


●名前(ペンネーム可)
●職業/年齢(差し障りのない範囲で結構です)
●国/州 or 地域名(例 :アメリカ/ニューヨーク/ハーレム)
●そのコミュニティに暮らしている期間(●週間/●ヶ月間/●年)


お送りいただいたエッセイは、私のメルマガ/HPで紹介いたします。
(ただし全作品を紹介できない場合もあります)
また、後日、別の媒体で発表することも有り得ますので、予めご了承ください。


では、楽しい作品をお待ちしています!

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