アフリカン・ネームを持つブラック・キッズ

2001/01/18

アフリカン･ネームを持つ
ブラック･キッズ

　先週のニューヨーク・タイムズ紙によると、1999年にニューヨーク・シティで生まれた赤ちゃんに付けられた名前のうち、人気のトップ３は、女の子がアシュリー、サマンサ、エミリー、男の子はマイケル、ジャスティン、マシューとのこと。

　ここは世界に類を見ない多民族シティ。人種別の人口構成比を見てもそれはすぐに判る。おおまかに言うと、全体からアジア系の10％ほどを引いた残り90％を白人、黒人、ラティーノがほぼ３等分という構成。しかも、人口のなんと40％は外国生まれの移民で、家庭内では英語ではなく母国語を話していると言う。さらにそれらの移民は、一般的にはアメリカ人よりも、たくさんの子供を生む傾向がある。なのに人気の名前リストに上がっているのは、なぜかどれも英語名ばかり。

　移民一世たちは、子供には自分たちのような苦労はさせたくない、希望の国アメリカで成功して欲しいという願いから、母国語の名前ではなく、アメリカ風の名前を付ける傾向にある。実際、人種別の名前人気ナンバー・ワンは、ラティーノなら女の子はアシュリー、男の子はクリストファー、黒人はカイラとジャスティン、白人はサラとマイケル、アジア系はミッシェルとケビンといった具合で、黒人の女の子の“カイラ”以外は、どれもアメリカ風だ。

　けれど、実はアフリカン－アメリカンの間では、上記のカイラだけではなく、アフリカ風の名前が流行っており、本屋に行けばアフリカン－アメリカンのマミィ＆ダディ予備軍に向けた名付け本の類いも多く見かける。そう、アフリカン－アメリカンは移民ではなく、何世代にも渡ってここに住み続けている生粋の“アメリカ人”であり、もう、ありきたりのアメリカン・ネームには飽きているのだ。

　実際、ハーレムなどニューヨークの黒人地区の小学校の名簿を見てみると、女の子ならラティーシャ、シャネイ、ブリアナ、イマーニ、サマリ、ラボンダ、ザキア、アイヨetc. , etc…とスワヒリ語から引用した名前のオンパレード。一方、男の子ならジャマール、ナジー、ナイジェル、タイクワン、ジュワニ、タイリークなどなど、カラフルなこと、この上ない。反対に、5歳でジミーという名の男の子を見かけたときには思わず、今どき珍しい、とつぶやいてしまったほど。

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　また、これらアフリカ風の名前が流行る以前から、アフリカン－アメリカンは“派手”で“立派”な名前を好んできた。例えば、ミュージシャンのプリンス（王子）。これは、信じられないことに実名だし、その遥か以前から伝説のジャズ・ミュージシャンたちは、錚々たる芸名を持っていた。デューク（公爵）・エリントン、カウント（伯爵）・ベイシー …。これらは、黒人として抑圧された境遇からの脱出を夢見て付けられた名前だった。

　とは言え、以前はほとんどのアフリカン－アメリカンは、ビルやメアリといった一般的なアメリカ名を持っていたのだけれど、同時に多くの人がストリート・ネーム（ニックネーム）を持っていた。その伝統は、今でもヒップホップ・ミュージシャンの名前を見ればよく判る。

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　最近のアフリカン・ネームの流行の理由は、奴隷制時代にアメリカ名を強制された歴史をもつ彼らの、自らのルーツへの立ち返り。けれど実のところ、もうひとつの大きな理由は、我が子にユニークな個性の持ち主に育って欲しいという、万国共通の親としての願望に違いない。とは言え、これだけ変わった名前が氾濫してしまうと、一体なにがユニークなのか、定かではなくなってきているのも事実だけれど。

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