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2000/12/28

クワンザ
Kwanzaa
〜アフリカン−アメリカンであることを祝う〜

 ニューヨークでは近年、クリスマス・シーズンの挨拶が「メリー・クリスマス!」から「ハッピー・ホリデイズ!」に変わりつつある。その理由は、クリスマスを祝うのはキリスト教徒だけであり、他の宗教を持つ人々は祝わないからだ。けれど、クリスマスとほぼ同時期にユダヤ教徒には「ハヌカHanukkah」、アフリカン−アメリカンには「クワンザKwanzaa」という行事があり、この3つをまとめて「ハッピー・ホリデイズ!」とするのである。


 一般の日本人には「普通の白人」に見えるユダヤ人だけれど、彼らはクリスマスを祝わない。家庭にはクリスマス・ツリーはないし、プレゼントの交換もない。と言ってもアメリカではクリスマスは社会的行事となっているので、例えば職場でもクリスマス・パーティは開かれるし、多くのユダヤ人は、そういった場には社交辞令として参加する。けれど自宅やユダヤ人コミュニティでは、自らの宗教に基づくハヌカを祝うのだ。これは伝統ある行事であり、一般のカレンダーにも必ず記されている。


 一方、多くのアフリカン−アメリカンはクリスチャンなのでクリスマスを祝うけれど、同時にクワンザという、比較的新しい行事を祝う人もいる。クワンザは1966年にカリフォルニア大学教授のマウラナ・カレンガ博士が提唱して始まった行事で、毎年12月26日から始まり、1月1日まで続く。クワンザとはアフリカの言葉で「初めての果物」という意味であり、アメリカに暮らすアフリカン−アメリカンが、遠い祖国アフリカの文化や伝統を祝うと共に、自らの誇りや、アメリカでの未来を切り拓くための礎を確認するためのもの。ちなみにクワンザがクリスマスの翌日26日から始まるのは、通常、この日からどこの店でもアフター・クリスマス・セールが始まるので、1966年当時、貧しかった黒人たちもクワンザのための買い物がしやすいように、という理由であったとか。


 クワンザには決まったテーブル・セッティングがある。麦わら製のマット(Mkeka)をテーブルに敷き、7本のロウソク(Mishumaa saba)を立てたキャンドル・スタンド(Kinara)を置く。ロウソクはアフリカン−アメリカン・フラッグの色である赤・黒・緑であり、それぞれのロウソクがクワンザの7つの信条「結束、自己決定、共同事業と責任、共同経済、目的、創造性、信頼」を表している。また、キャンドル・スタンドの前には収穫を表すフルーツ(Mazao)、その家庭の子供の人数分のトウモロコシ(Vibunzi)、手作りのプレゼント(Zawadi)を置く。
※( )内はアフリカのスワヒリ語。

クワンザ切手
クワンザ記念切手(製造中止)

 ハーレムYMCAでも、子供たちによるクワンザ・パーティが開かれた。体育館に設けられた小さなステージには、7本のロウソクとフルーツ、コーンが置かれている。その前に並べられたパイプ椅子には子供たちの家族や親戚が座っている。ステージ後方にはパーカッション・プレイヤーが控えており、低いトーンでアフリカン・ドラム風のリズムを刻み続けている。まずはダシキ(アフリカン・プリントのシャツ)を着込み、ドレッドロックを揺らせた男性がクワンザについて語り、子供たちとアフリカの言葉によるコール&レスポンスを繰り返す。その後は子供たちが数人ずつステージに表れては、アフリカの言葉でクワンザの7つの信条を読み上げる。ユモージャ!(Umoja−結束)、クジチャグリア!(Kujichagulia−自己決定)、ユジーマ!(Ujima−共同事業と責任)、ユジャマー!(Ujamaa−共同経済)、ニーア!(Nia−目的)、クウンバ!(Kuumba−創造性)、イマーニ!(Imani−信頼)。


 子供たちによる合唱や寸劇、ダンスに続いて、エリカ・バドゥ風のヘッド・ラップとアフリカン・ドレスに身を包んだ女性が、現在もアフリカン−アメリカンが置かれている厳しい状況についてのポエトリー・リーディングを披露。詩には警察による黒人虐待事件なども織り込まれている。それが終ると子供たちが全員登場し、客席をぐるりと囲んで手をつなぎ、人の輪を作ってイベントは終了。あとは体育館内に用意されたビュッフェ・カウンターに並んでチキンやケーキを紙皿によそってもらって、みんなで食事。他のカウンターでは、子供たちが作ったクワンザのオーナメントがひとつ1ドルで売られている。食べ終った子供たちは大人しくしていることに、もうとっくに飽きていて、とたんに飾り付けの風船に飛びついたり、はねたり、叫んだり、もう大騒ぎ。

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 もらったパンフレットで7つの信条を詳しく読むと、そこには「自己決定−自分自身を確定する、自分自身で名付ける、自分自身を創造する、自分自身のために語る」、「共同経済−自分たち自身の商店やビジネスを共同で持つ」などとある。白人奴隷主から自身の言葉であるアフリカの言葉を禁じられ、アメリカ風の名前を強制された歴史、重労働の揚げ句に手にしたわずかな賃金を、白人店主の店で使わざるを得ず、結局黒人コミュニティには何も残らなかったという歴史に基づいて作られたものだろう。

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 テレビ・ニュース(NY1)によると、今年は全米で80万世帯がクワンザをセレブレートしたそうだ。

参考サイト:Black Voices
クワンザの詳細が判ります。(英語)
http://www.blackvoices.com/feature/kwanzaa/

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