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2000/02/25

白人警官によるアフリカ移民虐殺事件
〜 無罪判決 〜


昨年(1999年)2月4日、ニューヨークのブロンクスでまったく無実のアフリカ人移民アマドゥ・ディアロ Amadou Diallo 氏(当時22才)が4人の白人私服警官から41発もの銃撃を受け、うち19発が命中し、亡くなりました。


仕事を終えて深夜に帰宅したディアロ氏は、再び出掛けようとしてアパートの入り口にちょうど出たところで、4人の警官から職務質問を受けました。警官は彼を指名手配中のレイプ犯、もしくは強盗を企んでいる不審人物だと思ったと言っています。その際に警官はディアロ氏が拳銃を持っていると思い、自己防衛のために撃ったと言いましたが、彼が手にしていたのはサイフだけでした。しかし4人の警官は合わせて41発を乱射。うち2人は16発ずつ、つまり拳銃の弾倉が空になるまで撃ち尽くしています。


今日2月25日に、4人の警官が殺人罪で訴えられていた裁判の判決が出ました。


4人の警官は“無罪”でした。

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白人の黒人に対する差別は、よく知られていますが、それと同時に、白人には黒人に対する“恐れ”があります。


多くの白人は子供の頃から、知らず知らずのうちに周囲の大人やTVなどのメディアから“黒人は恐ろしい”“黒人は何をするか判らない”といったことを思い込まされてしまいます。こういった環境で育った白人は、例え警官であってもその“恐れ”を生涯忘れることはありません。


今回の事件も、4人の白人警官が無意識のうちに持っていた黒人に対する恐れが、41発もの乱射という過剰防衛となって表れたのだと私は思っています。


いうなれば4人の白人警官もまた、被害者なのです。しかしながら警官という、本来は民間人を守るべき立場の者が武器も持たない、前科もない、まったくの一般人を黒人だからというだけの理由で殺してしまったという事実を正当化するのは間違っています。彼らは社会的責任を果たすべきです。また彼らはNY市警という公的機関の一員であったわけですから、NY市警もまた、なんらかの形で責任を取るべきです。


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亡くなったのは単に“とある黒人”ではなく、アマドゥ・ディアロという名の、22才の、家族や友人もある青年でした。


41発の銃弾



紙に41個の銃弾の絵を描いてみてください。それが自分、あるいは家族や友人、恋人に向かって発射されたと想像してみてください。そして、その理由が単に“肌の色”だけであったと。

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警官無罪の判決は、誰にとってもショックでした。人々がまず口にしたのは「まさか…!」、次の瞬間には人々は、押さえきれない怒りを次々と発し出しました。


私がこれを書いている現在時刻は、判決が出た2月25日の夜9時過ぎですが、テレビのニュースによると、雨模様の悪天候にもかかわらず、ディアロ氏が撃たれて亡くなったブロンクスの彼のアパート前にはかなりの人々が集い、抗議の声を上げています。L.A.暴動を引き起こしたロドニー・キング事件の時とは違い、人々はあくまで冷静に行動しているようですが、この週末になにが起こるのかは誰にも判りません。

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