NYBCT

2003/04/09



死にゆくラティーノ兵士
イラク攻撃



4月8日現在、米軍の戦死者は96人、行方不明・捕虜は17人
(英軍の戦死者31人、行方不明・捕虜0人)

人種/エスニック

戦死者数

米軍の人種/エスニック比
 白人 69人 65.6%
 黒人 14人(1人=ジャマイカ生まれ) 20.1%
 ラティーノ 10人(5人=外国籍) 7.9%
 他のマイノリティ 2人(1人=ネイティブ・アメリカン、1人=フィリピン籍) 6.3%
 不明 1人


※戦死者の人種・エスニックはCNNなどのリストを参考に、筆者が名前、写真、記事の内容から推測したもので、誤りも有り得ます


 今日のニューヨーク・タイムズには、黒人の幼い少年が星条旗で覆われた棺の前でうなだれている大きなカラー写真が掲載された。戦死したジャマール・R・アディソン(22歳、ジョージア州)の義理の息子(妻の連れ子)だ。まだ5~6歳なのに、きちんとネクタイとベストを着せられていた。


 昨日の同紙には、やはり戦死したブランドン・U・スローン(19歳、オハイオ州)の父親の姿が掲載されていた。黒人教会の牧師で、ふだんは自分が取り仕切る葬儀で遺族を慰めているのに、今日は自分が慰められることになるのだ。


 米軍の戦死者数が100人に近づき、最近では戦死者の遺族への取材や、アメリカは何人までの戦死者なら心理的に耐えられるかといった記事が目につき始めた。こういった記事でクローズアップされる戦死者とその遺族は、黒人か白人だ。特に黒人が多いように思える。その理由は黒人の軍隊加入率が高いことと、黒人は<アメリカ人>として、メディアの作り手である白人にも認知されているということ。黒人はいまだに差別と貧困のなかにあり、白人の中には明らかに黒人を見下している者もいるが、そんな白人にとってすら、黒人は<アメリカの一部>なのだ。


 ところが、ラティーノはまだそこまでアメリカに受け入れられてはいない。メディアでラティーノ兵のバイオや家族・遺族が取り上げられることは、少なくともニューヨークではほとんどない。いまだに<アメリカ人>として認知されていない証拠だと言えるだろう。


 けれど、先の一覧を注意深く見ると、ラティーノの軍隊加入率が黒人に比べて低いにもかかわらず、戦死者の数が多いことに気付く。


黒人・・・・・戦死14人(1人=ジャマイカ生まれ)【軍隊加入率 20.1%】
ラティーノ・・戦死10人(5人=外国籍)【軍隊加入率 7.9%】


 これはラティーノに最前線で闘っている者が多いことを指しはしないか。黒人は陸軍と海軍では、すでにそれなりの地位を築き、また管理部門に多く配属されているという。他方、ラティーノは兵士の約3分の1がアメリカ国籍を持たない移民であり、彼らの出世には限界がある。(
移民兵士/反戦のリスク参照) すでに戦死した10人も、その半分は非アメリカ人だった。


 イラクの一般市民の犠牲者数は、4月8日現在1,252人。





※以下の記事はホームページにある<日々の考察>にアップ済みのものを編集したものです

■世論調査の妥当性


世論調査では、いまだに戦争肯定派が70%だという。

この電話による世論調査には、以前から意義を唱えるマイノリティ識者たちがいる。電話による世論調査は、無作為に選ばれた電話番号に電話をかけて行われる。無作為だから、すべての所得層・人種・エスニックに等しく電話をかけているはず、とされている。

ところが、貧しい移民や、アメリカ国民でも低所得者(つまりラティーノや黒人)には電話を持っていない者も多い。(最近は携帯電話を持つ人は増えてきたけれど、携帯は世論調査の対象外)そういった人たちは始めから<無作為抽出>の中に含まれていないのだ。

要するに世論調査の対象は、最低でも電話を持つだけの所得がある人に限られているのだ。



■フセインは、ボクのパパを殺そうとした


そういえば、この件は日本で報道されたのかな。

昨年9月、地元テキサスを訪れたブッシュ大統領は、スピーチでこんなことを言ってます。相変わらずお茶目さんです。

「つまり、この男(フセイン)は、ボクのパパを殺そうとした奴なんだよ」
After all, this is the guy who tried to kill my dad.

ちょっと解説。小さな子供でもない限り、人前で父親のことをパパ(dad)なんて言わないです。そして、パパ・ブッシュが暗殺されそうになったのは合衆国大統領としてであって、ブッシュ・ジュニアの父親だからでは当然ありません。

この戦争、石油のためではないと思いますが、いかが?



■爆撃と寄付


イラクへの爆撃で両親と兄弟を亡くし、自身も右腕を吹き飛ばされてしまった少年の映像がCNNで流れた。病院のベッドに横たわり、肩から数センチ先からがなく、右脇腹が焼けただれている。カメラマンたちに囲まれ、シャッター音が鳴り響いてフラッシュが瞬いた瞬間に、少年は今にも泣き出しそうに顔をゆがめた。

この映像がオンエアされた後、CNNにはこの少年に援助の寄付をしたいという問い合わせが殺到したそうだ。

「サダムが悪いんだから戦争は仕方ないわよね。でも、この子はとっても可哀相だから寄付しましょう」ってことかな。いずれにせよ、寄付金は少年を経済的には助けるだろうし。いや、少年の手元に届くのかな、果たして。

このニュースの直後に、ホワイト・クリスチャン・ミュージック(白人キリスト教徒によるゴスペル)のCDの通販CMが流れた。教会か、もしくはコンサート会場に集った一般のキリスト教徒が手をつないで、身体を揺らしながら、目に涙を浮かべながら、クリスチャン・ミュージックを口ずさんでいる。誰のために涙ぐんでいるのだろう? あ、自分のためか。



■こんなサイトあります


この日誌へのリンクを貼ってくださった2サイトを紹介します。


Orange Peace オレンジピース
インディーズブランドズによるイラク戦争被災者への医療支援を目的としたチャリティーサイト
イラストレータ兼ウェブデザイナのyou!さんが運営


Do the HUSTLE!! ドゥ・ザ・ハッスル !!
1970年代から1980年代のディスコ・ミュージックを紹介しているページ/私にできることは、『愛』や『想い・願い』を音楽によって表現していくこと
沖縄のミュージック・バー K-Funk のオーナーさんが運営


パレスチナ取材をされたこともあるライター
山口花能さんのホームページと、イラク戦争についての<煩悶日記>は共に読みごたえがあります



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