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2003/04/05



ジェシカの選択
イラク攻撃

 ※今回の記事は<日々の考察>にアップ済みのものを編集したものです



■今回は見捨てません


イギリス軍がイラクのバサラ近郊で配ったパンフレット。

イラク人と米英兵が笑顔で握手しているイラスト。
<今回はあなたたちを見捨てませんよ。共に忍耐強くあれば、勝利を得るでしょう>

湾岸戦争後に、多国籍軍側がイラク人の反体制派に蜂起をそそのかしておきながらそのバックアップをしなかったために、反体制派の人たちがイラク軍にやられちゃったことを指しているのだ。

前回はたくさんの人が見殺しにされているのに、<今回は見捨てません>と言われてもねえ。こんなモノ配る神経がちょっと、いや、かなり、不思議。


■ 875ドルの平和


<平和のなかで生きる人生をイマジンしましょう…>
ピースマークをかたどったダイアモンドのペンダント875ドル也、のキャッチフレーズ。875ドルのうち44ドルはどこかへ寄付されるそうな。

こんなものに875ドルも出すのなら、その875ドルをそっくり寄付すればいいのではないでしょうか。でも社会派Bボーイを気取ってみたい場合はいいかもしれないですね。お買い物は以下のサイトから
http://www.adw.com/cgi-bin/mx.cgi?af=AD&pg=inl&stock=JFP018


■変わりゆくハーレム


たまにはハーレムのことも書かねば。

今、発売中のファッション雑誌LUIRE(ルイール)に、ハーレムの新しくてお洒落なお店のオーナー4人へのインタビュー記事を掲載しています。これまでのハーレムといえば、とかく<ファンキー>なものが求められていたわけだけれど、この4人は新しいフレイバーをハーレムに持ち込んでくれたのです。(地図まで載せたのに、戦争で観光客激減!)

偶然、こちらの<ぴあ>のような雑誌Time Outでもニュー・ハーレムと銘打って、これらのお店の紹介をしています。ニューヨーク在住で興味のある方は見てみてください。


■戦争の写真2


写真は、時に動画よりも強い印象を見る者に与える。

3月31日のニューヨーク・タイムズに掲載された写真。

米軍の検問所で検問中のトラックの荷台に乗っている若い母親と2人の女の子。黒いチャドルを着た母親は小さなほうの子供を抱き、警戒と不信の強いまなざしを、おそらくは米兵のいるほうに投げかけている。

地面にしゃがみ、弾丸を避けるかのように身をかがめている難民たち。

そうかと思えば別の写真には、好奇心いっぱいで、なかば微笑みながら米兵を見上げている女の子。

塹壕でM-16ライフルを構えている黒人女性兵は、少なくとも18歳のはずだけれど、顔立ちは高校生にしか見えない。

イラク人の家を一軒ずつ捜査してまわる兵士たち。中に武装者がいるかもしれず、非常に危険。しかし、家の中の散乱した家財道具を見ると、あわてて必要最低限のものだけを持って出て行ったことが伺える。タンスが開いていて、ほとんどのものは残っている。ここも昨日までは誰かが普通に暮らしていた家なのだ。昨日までは誰かがきちんと掃除をして、料理をして、戦争の恐怖に怯えながらも、家族団らんがあったのだ。


■ジェシカの選択


先月23日から行方不明になっていた海兵隊員ジェシカ・リンチ(19歳)が救出された。数発撃たれ、両足と片腕を骨折しているものの安定した状態で、治療のためにドイツに搬送されたという。ヴァージニア州に住む両親は今の気持ちを訊かれ、「とても表現できません」と答えた。

それはそうだろう。娘が行方不明となって以来、それこそ生きた心地もしない毎日だっただろう。

けれど、たとえ女性であっても、19歳であっても、ジェシカ・リンチは本人の意志で入隊した兵士なのだ。

今、イラクで空爆にさらされている19歳の少女には、どんな選択もないのだ。


■CNNが報道するニュース


開戦後、CNNは24時間、戦争報道一色だった。他のネタは本当にひとつもなかった。これはやりすぎだと思っていた。アメリカ国内でも大きな竜巻があって家が吹き飛ばされてしまった地域があったり、なんと10歳の子供が3歳の幼児を殺してしまった事件、昨日書いた連続殺人事件など、相変わらずいろいろと起こっているのに、それを一切無視していた。3歳殺人事件や、ニューヨークの連続殺人事件は、それなりに背景を探る必要がある事件なのに。

それがここ2〜3日、時々SARSのニュースが挟まれるようになった。なぜ、この事件だけが特別なのか?思うに<アメリカのミドルクラス以上の白人>も感染する可能性があるからでしょう。実際、アメリカ人でこの時期に香港に行ったりするのは出張のビジネスピープル。

10歳の殺人犯・3歳の被害者は共に黒人。ニューヨークの連続殺人事件も、犯人は黒人で、被害者は全員が移民。その一方、以前、全国規模で大きく報道されたワシントンDC連続殺人は、犯人は黒人だったけれど、被害者の多くはミドルクラスの白人だった。ライフルによる長距離狙撃という、話題性があったことも確かだけれど。


■ブルックリン・クイーンズ連続殺人犯


2月から3月にかけてニューヨークのブルックリンとクイーンズで4人を撃ち殺した連続殺人犯が捕まった。30歳の黒人の男だ。9.11テロ事件のあとアラブ系を恐れるようになっての犯行。ところが、4人のうちアラブ系だったのはひとりだけ。あとは犯人が勝手にアラブ系だと思い込んだ人たちで、まったくの悲劇。唯一のアラブ系男性にしてもテロリストだったわけではない。ちなみに全員が移民のブルーカラー。

実はこの事件、殺人そのもの以外に、少なくともふたつの深刻な問題点があるように私には思える。これについては後日、書きます。


■ 北イラクの脅威?


Jestというアンダーグラウンドなユーモア雑誌がある。表紙は、ブルームバーグ市長が、ベッドでタバコを吸っているカップルに消防ホースで水をかけているイラスト。そう、ニューヨークではとうとうバーも禁煙になってしまった。愛煙家のみなさんはニューヨーク旅行、キビしいものになりますよ。

この雑誌に「北朝鮮とイラク、どちらがより危険か、街角のハトに訊いてみました」というコーナーがある。ハトの写真が数枚あって、それぞれにハトが答えた(とされる)コメントが書かれている。なかの1羽の答えは、「執筆中だった博士論文に対する興味が薄れて以降、私はファシズムがいかに強力で優れたものであるかに気付いたのだ。したがって私の答えは<北イラク>だと言えるだろう」。

爆笑。インテリぶってあれこれ喋る人に限って、実はなにも分かっていないことへの揶揄か、北イラク。

それよりも、イラク、イラクで塗りつぶされているアメリカのメディアにあって、北朝鮮を話題に取り上げていること自体に驚かされた。本当に視野が広いインテリは、実はマスメディアではなく、こんなところにいるのかもしれない。

ちなみに、他のハトは「タクシーの運転手もコワい」と答えている。ニューヨークのイエローキャブ運転手にはアラブ系/イスラム教徒が多く、開戦後は客数が激減しているそうだ。ニューヨーカーよ、タクシーに乗った途端に自爆テロされるとでも思っているのか??? 運転手たちはキツい仕事を我慢しながら、母国の家族に仕送りをしている勤勉な人たちなのだ。ん?<母国に仕送り>? これがテロ資金に流れてるとでも思っているのだろうか?


■ジュリアーニ前市長 in TVドラマ


9.11テロ事件時の強力なリーダーシップを賞賛され、“アメリカの市長”とまで呼ばれたジュリアーニ前市長の伝記ドラマ「ルディ〜ルディ・ジュリアーニ物語」が昨日オンエアされた。まだ死んでない人の伝記ドラマなんて、これはかなり凄いこと。

ちなみにこのジュリアーニ前市長、ニューヨーク・シティ以外の住人にとっては、素晴らしい人物。ニューヨークの共和党/中産階級以上の白人にとっても同様。けれどニューヨークのマイノリティ、特に黒人とラティーノにとってはまさに天敵だった。徹底的な差別政策を採ったのだ。ドラマのキャッチフレーズ<ニューヨークを分断させ、アメリカをユナイトさせた>というのは実に言い得て妙。

うちの夫も当然ジュリアーニが大嫌い。ドラマでは味のある渋い俳優ジェームズ・ウッズがハゲのヅラを被ってジュリアーニ役を演じた。妻役のアン・ペネロープ・ミラーとのキス・シーンで、夫は「うえっ!」と言ってテレビから目をそらせてしまった。本物のジュリアーニがキスしている様子を想像してしまったようだ。(私もそれは見たくないなあ)

それはともかく、ジュリアーニは大統領になる野望を持っていると言われている。前回の上院選は立候補を表明しながら前立腺ガンが発覚して選挙戦脱落、ヒラリー・クリントンが当選したのだ。このヒラリーも大統領選への立候補が取りざたされている。もしかして、史上初の夫婦(めおと)大統領が誕生するかも。まあ、ジュリアーニにとっては永遠のライバルか。

話はジュリアーニに戻る。この男、どんな強引な手段を使ってでも思い通りの政策を押し進める能力があること、嫌いな相手にはまったく容赦がないことは事実。もし彼が本当に大統領になっちゃったら、日本なんか今まで以上に好きなように扱われ、属国扱いになるでしょう。

いずれにしても、ジュリアーニが好きであろうと、嫌いであろうと、ニューヨーカーにとっては、とにかくその存在を無視できない人物。

ドラマの出来はあまり良くなかったです。ジェームズ・ウッズは頑張ってたけど。



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