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ハーレムの出来事あれこれ

ユース・ミーティング「ライフ・イズ・チャレンジ」
アヒ-ラーズ・パレス(マルコムX縁りのレストラン)
パッセージ (黒人作家によるモダンアート展)
ニュー・マジョリティ・ミーティング/ハーレム・バス・ツアー
デジタル・セイフ・ハウス・コレクティブ〜コンピュータ教室 in ブロンクス
ミュージカル「ザ・ドーン・オブ・リズム&ブルース」
ファッション・ショー at スパニッシュ・ハーレム




1999/12/07

ユース・ミーティング「ライフ・イズ・チャレンジ」
Youth Meeting "Life's challenges'

於:ニューヨーク市立小学校207
PS207
117th St. (bet. 5th Ave. & Lenox Ave.)
New York, NY



ハーレムにある公立小学校207の一室で行われた、ゲスト・スピーカーと十代のキッズによるディスカッション・ミーティング。



ラップ・グループ、グッディ・モブがゲスト予定だったので、主催者側がラップ・ファンの殺到を避けるために参加者をユース団体所属の子供たち100人に限定していたところ、前日に彼らがレコーディングのために参加をキャンセル。その結果、会場の座席の約半分、50席ほどが埋まっただけの、やや寂しい雰囲気のなか、ディスカッションは始まった。ユース団体所属と言えども、ブラック・キッズの大半はやはりラップ・ファンなのだ。



まず、ショータイム・ネットワークというテレビ局のディレクター、コメンテーターなどの3人が登場し、各々の生い立ちとキャリアを子供たちに説明。3人ともに恵まれた家庭環境ではなかったものの、奨学金を得て大学に進み、以後、それぞれのやり方でショー・ビジネスにチャレンジ。7人兄弟のなかで育ったという、まだ若い黒人女性ディレクターは学生時代にインターン(研修生)としてショータイム・ネットワークに入り、朝6時半からのモーニング・ショーの裏方として毎朝4時半に起きていたというエピソードを紹介。インターンということはもちろん無給だけれど、そのインターン時代に彼女はショー・ビジネスの舞台裏を十分に勉強したと言う。ちなみに現在の彼女は、とても貧しい家庭で育ったとは思えない、黒のパンツ・スーツが似合うスレンダーで洗練されたニューヨーク・キャリア・ウーマン。



このあと、3人が子供たちからの質問に答えたなかで共通していたことは、とにかく“working hard”、夢をかなえるためには努力しろということ。一般に日本人のほうがアメリカ人より勤勉だと思われているけれど、ある種のアメリカ人は本当によく働く。そして「努力しろ」、あるいは「私は努力した(している)」と口に出すことを全くためらわない。



この後、参加をキャンセルしたはずのグッディ・モブのメンバーのひとり、Big Gipp が突如ステージに現れた。オレンジのキャップと、それに合わせたもちろんオーバーサイズのオレンジのチェックのネル・シャツにゴールドのチェーン。レコーディングを抜け出して、やって来たと言う。アトランタ出身の彼は、スローな南部訛りと低めの声がとても魅力的ではあったけれど、加えてラッパー故の習性か、マイクに異常に近づいて話すので、ほとんど聞き取れない。自分でも「俺たちはニューヨークの人間とは違った話し方をするからね」と言っていたけれど。

*グッディ・モブのHP(
http://www.peeps.com/goodiemob …スラング辞書SLUMTIONARYのページが楽しい)



この催しは、資産運営やマーケティングからブラック・コミュニティのためのイベント開催まで手がけるアリーズ・コミュニケーションズ(Alease Communications)の代表キーシャ・ジョーンズ(Keisha Jones)と、ブラック・キッズのためのフリー・ペーパー、ハーレム・オーヴァーハード(Harlem Overheard /
http://www.harlemoverheard.org) が主催。




アヒ-ラーズ・パレス(レストラン)
Aahirah's Palace

108 W. 116th St. (near Malcolm X Boulevard)
New York, NY 10026
(212)663-5300



PS207 から道一本隔てた角に、マルコムXの建てたイスラム寺院、マスジッド・マルコム・シャバズがあり、毎日定時にコーランを結構大きな音量で流している。大きな玉ねぎ型の屋根とコーランの調べが、なんだか異国のなかの、さらに異国という風情を醸し出している。(1階にはテナントの店がたくさん入っているので、実はあやしいラブ・ホテル風にも見えるのだけれど)



そのモスクの2軒先にモスクが経営する小さなレストラン、アヒラーズ・パレスがある。イスラム教徒でなくとも気軽に入れるこのレストランは、確かスパイク・リーの映画「マルコムX」にも出てきたと思う。ウエイターたちはブラック・イスラムの制服とも言うべき白いシャツに黒の蝶ネクタイ姿で、とても礼儀正しく、客のなかには黒いベールで髪を覆った女性信者も見かけられる。料理の値段は安く、近くにはアフリカン・グッズの小さなテナントが約90軒入ったシャバズ・マーケットもあるので、週末の昼間に来れば楽しいところ。




1999/12/05

パッセージ (黒人作家によるモダンアート展)
Passage

於:スタジオ・ミュージアム・イン・ハーレム
SMH/The Studio Museum in Harlem
144 W. 125th St.
New York, NY 10027
(212)864-4500
http://www.StudioMuseuminHarlem.org



ハーレムのメイン・ストリート、125丁目にある美術館、SMH(スタジオ・ミュージアム・イン・ハーレム)で、“パッセージ”と題された展覧会が開催中。



アフリカン・アメリカン作家による美術作品というとプリミティブなアフリカン・アートを連想しがちだけれど、これは約10人のモダン・アート作家によるもので、かなり前衛的な作品も見受けられた。もちろん作家自身の出自を表すアフリカ風のものもあったけれど、作品からは作家の人種を特定出来ない洗練されたものも多かった。



新しい試みとして、作家自身に作品を説明する10単語を書かせ、それを作品の脇に添えるということが行われていた。例えば、帯状の布を大きな板に幾重にも巻き付け、あとから原色の絵の具を塗った Gregory Coates の "passion Witness" (情熱の証人)という作品には "Passion / Gesture / Dinner / Tapestry / Line / Production / Travel / Audacity / Movement / Surface" と言う言葉が添えられていたけれど、これ、ほとんど作品を見たまんま。優れた美術作家が言葉にも秀でているとは限らないし、そもそもアートに解説はいらないのである。綿の塊に焼き印を押した "Untitled" (無題)という作品に "I / never / add / words / to / my / work / but / feel / free" (自分の作品を解説したことはないけれど、なんだかいい感じ)と書き添えたLeonardo Drew はきっと聡明な人。



この美術館の売店はガラス張りで通りに面していて、展覧会の入場者でなくても入れる。今は季節柄、クリスマス・グッズも置いてあるのだけれど、ここの天使たちの顔はもちろん、どれもみんな奇麗なブラウンなのである。

 



1999/11/23

ニュー・マジョリティ・ミーティング/ハーレム・バス・ツアー
New Majority Meeting

於:アダム・クレイトン・パウエルJr. ステイト・オフィス・ビルディング
Adam Clayton Powell Jr. State Office Buil.
125th St. Adam Clayton Powell Jr. Boulevard.
New York, NY 10027



ニュー・マジョリティとは一体何ぞ? 答えは簡単なたし算であった。米国に於ける3大マイノリティである黒人、ラティーノ、アジア系アメリカ人が合体すれば、マジョリティである白人を軽く凌ぐ人口と経済力を持つ“ニュー・マジョリティ”に成り得るという発想のもとに発足したビジネス連合。そのニュー・マジョリティがハーレムで催したブレックファスト・ミーティングに何故か私も参加した。まったくの場違いではあったけれど。



参加者はほとんどが大なり小なり自らビジネスを運営している経営者たちであり、従って時は金成りの鉄則に則って朝の8時半から朝食会合を開いたりするのだ。連合会長ジョン・ワン氏や地域の政治家ランゲル氏のスピーチが始まる前には、会場のあちこちで名刺を交換しつつの商談が花盛り。



ふと見るとNHKの取材班がカメラを廻していた。話を聞いたところ、元旦の夜10時からBSでオンエアされる特別番組のための取材とのこと。アメリカの経済をテーマにした2時間番組で、そのなかでハーレムのここ10年間の経済発展を取り上げるという。



ミーティングのあとは、ハーレムにあまり馴染みのないアジア系参加者のためのハーレム・バス・ツアー。アポロシアターなどがあるメインストリートの125丁目はもちろん、今はもう存在しない伝説のジャズ・クラブ“スモールズ・パラダイス”の跡地やプロジェクトと呼ばれる低所得者用高層アパートメント・ビル群から多くの歴史的建造物、瀟洒なアパートメントが並ぶストライバーズ・ロウまで見どころは多かった。ハーレムの中の高級住宅地シュガーヒルには残念ながら行かなかったけれど、そもそもハーレムはその昔、リッチだったオランダ人入植者のために開発された地区であり、デザインの優れた建物がとても多い。そういったエリアでは車道に止めてある車も地味ながら高級そうで、全くのミドルクラス住宅地である。人々がもっとこういう所を訪れればハーレムについてのイメージも変わるのだろう。

*ハーレムを知るのに最適のサイト、ホーム・トゥ・ハーレム: http://www.HomeToHarlem.com 




1999/11/23

デジタル・セイフ・ハウス・コレクティブ
〜コンピュータ教室 in ブロンクス〜

Digital Safe House Collective

於:The Key Skate & Dance Family Center
220E.138th St.
Bronx, NY 10451
(718) 401-1387



ハーレムの125丁目駅から5番の地下鉄に乗ったら次の138丁目駅はもうブロンクス。そこにザ・キー/スケート&ダンス・ファミリー・センターというローラースケート・リンクがある。今どき何故かインラインではなく、あくまで4コマのローラースケートなのだけれど、そこにビルと言うインストラクターがいる。スケート歴なんと56年、実はかなりの技を持つダンス・スケーターらしいけれど、普段は白髪頭を振り振り、鼻歌まじりにリンクのメンテナンスをしたり、ビギナーに滑り方の基礎を教えたりしている。そのビルが地元のキッズのためにリンクの隣の空きビルでコンピュータ教室を開くことを思いついた。スケートであれ、コンピュータであれ、子供たちが熱中できるものを提供し、ドラッグや犯罪に走るのを未然に防ぐことがコミュニティを良くすることに繋がると信じてのことだ。



とは言っても、あるのは建物だけでコンピュータやインストラクターを揃える資金などあるはずもない。そこでビルが私の勤めるパブリック・コミュニケーション会社の社長に相談したところ、社長はスポンサー企業を募ると同時にニューヨーク・シティ・カレッジにも掛け合い、50台のコンピュータとボランティアのインストラクターを確保。この日、シティ・カレッジから契約書が届き、こうしてブロンクスのコンピュータ教室は来春開校の運びとなった。

*スケートリンクのHP http://www.keysakte.com




1999/11/20

ミュージカル「ザ・ドーン・オブ・リズム&ブルース」
The Dawn of Rhythm and Blues

於:ナショナル・ブラック・シアター
The National Black Theatre
2033 5th Ave. (bet.125th &126th st.)
New York, NY 10027
(212)722-3800



ハーレムの目抜き通り125th ストリートにある劇場。「R&Bの夜明け」と名付けられた今回のミュージカル劇は1950〜1960年代のR&Bの変遷と、当時の黒人史というふたつの大きな流れを巧みに組み合わせ、それを代表的なR&Bソングと6人のアクターによるコミカルなダイアログで綴ったもの。おそらくアジア人の血も流れていると思われる芸達者な俳優がジェームズ・ブラウンの物真似で笑わせたかと思うと、マルコムXの暗殺シーンがあったり、また最後にはこのミュージカルの製作者の思いを象徴していると思われるサム・クックの名曲「チェンジズ・ゴナ・カム」(変化はやってくる)が歌われたりと、いくつもの見どころがあった。



幕間にはハーレムの地域経済向上に貢献している団体エンパワーメント・ゾーンのメンバーや、劇場主宰者によるスピーチ。エンパワーメント・ゾーンのメンバーでもあるレストラン、エミリーズのオーナーのスピーチには特に考えさせられるものがあった。彼の母親の名前を取ったというエミリーズは、その従業員の全員がハーレムの住人だという。これは他地域の人間に対して排他的ということではなく、ハーレムの住人を雇い、外部からの観光客をもてなすことによってレストランと従業員、ひいてはコミュニティ全体が潤うという考えによるものだと言う。家族の絆とコミュニティへの貢献−これは日本人の私にとってはまったく新しい“思想”。

*エミリーズのHP:http://www.newyork.citysearch.com/E/V/NYCNY/0008/28/16/




1999/11/18

ファッション・ショー at スパニッシュ・ハーレム
Curve Couture


於:ジュリア・デ・バルゴス・ラティーノ・カルチャラル・センター
Julia de Burgos Latino Cultural Center
1680 Lexington Ave.(106th St.)
New York, NY 10029
(212)831-4333



ふたりのラティーノ・デザイナー、アブデル・R.サラーム(Abdel R. Sallam)とアナ・D.ぺサンテ(Anna D. Pesante)による小規模なファッション・ショー。男性デザイナー、アブデルのデザインの特徴は、たっぷりのタックでウエストからヒップにかけてはボリューム感を持たせ、それが裾に向かって次第に細くなるパンツと、アフリカのデザインを取り入れた肩幅の広いジャケットの組み合わせ。う〜ん、これはヒップの位置が低い日本人にはちょっと着こなせない感じ。コリオグラファー(振付師)でもあるアブデルはダンスの躍動感をデザインのベースにしていると言う。



一方、女性デザイナー、アナのコンセプトは「ヒップを持った女性のためのエレガンス」。アナ本人も含め、ラティーノ女性は小柄なわりにヒップとバストが豊かで、既製品のフォーマルな服ではなかなかサイズが合わない。(ジェニファー・ロペスのヒップもかなり立派でしょ?) そこでアナは“普通のラティーノ女性”である自分たち自身のために、必要なのにブティックでは手に入らないものをデザインしている。襟のラインと背中のタックでバストとヒップの大きな人にもフィットするように工夫したテーラード・ジャケットや、凹凸のあるボディラインを微妙に隠したり、または誇張する素敵なドレスたち。需要とクリエイティヴィティの融合が、自然な形でマイノリティの自己主張につながっている。 

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